第一章 『春を待ちわびて』

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忙(せわ)しなかった年末とは、また雰囲気が違うアーケード。 31日までバイトに来てたというのに、年をまたいだというだけで、なんだか久しぶりのような気がしてしまうのが不思議だ。 新年モード切り替わっているのはバイト先である骨董品店『蔵』も同様で、 扉には正月飾りの丸いしめ縄、店の前には門松が飾られていた。 「おはようございます」 店の扉を開けると、いつものように『カラン』とドアベルが鳴った。 「おお、葵ちゃん。改めてあけましておめでとう」 張りのある声で言うオーナー。 その隣には店長にホームズさんがいて、 「あけましておめでとうございます」 と声を揃えた。 ちなみに、みんな揃って着物姿だ。
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