第一章 『春を待ちわびて』

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「とはいえ、着流しですけどね。僕らは商人ですし」 クスリと笑うホームズさんに、私は小首を傾げた。 「着流し?」 「袴をはかず着物だけの略式の着方を、着流しというんです」 「あ、オーナーがいつも着ているのも『着流し』なんですね」 「ええ。それより、葵さんもその着物、よく似合っていますよ」 微笑んで言うホームズさんに続いて、オーナーや店長も強く頷いた。 「ほんまやな。可愛らしい」 「ええ、よくお似合いです」 「……あ、ありがとうございます」 そう、私も実は例によって着物を事前に用意してもらって、お母さんに着せてもらっての出勤だったりする。
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