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「お前が幸せにならねぇ恋愛なら、しがみつかなくていいんだよ。」
真剣に見つめられてそう呟かれると、何だか胸の奥がきゅうっとなった。
彼は最近よく私に触れて、頻繁にこの目で私を見つめてくるようになった。
それの意味するところがなんなのか、本当はとっくに気づいているのに、私は決して言葉にも態度にも出さない。
体の奥底からにじみ出てくるこの幸せに似た感情に、私はあえて蓋をしているんだ。
「今のお前に何言ったって無駄なんだろうな。もーいいから、よこせよ、ソレ。」
溜息と同時に顎で促されて視線をやると、さっき蹴ったチョコレートの箱が見える。
「なんでこんなモノ。」
「どーせヤケ食いされるかゴミ箱行きかどちらかだろ?それじゃ可愛そうだ。チョコも、チョコに込められたお前の気持ちも。」
私の気持ち・・・?
あの人が全く考えてくれもしなかった私の気持ちを、あんたは可哀想だって言うの?
誰にも言えない、話せないこのどうしようもない歪んだ気持ちを。
可哀想だって言ってくれるの?
「今年はこれで勘弁してやる。その代わり来年はこのチョコより気持ちのこもったチョコ、お前ごと貰うからな。」
「はぁっ!?」
あまりにもサラリと凄いことを言った彼は、ニヤリと意地悪に微笑んであの人に渡せなかったチョコレートボンボンを口に運んだ。
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