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私はバカだ……。こんな夜中に出歩いてしまったのが悪かった。
目の前には、いかにも悪そうな顔つきの男達が五人。私の力では、どうにも切り抜けられそうにはない。
……助けを呼んでも、彼は絶対に来ない。そんなこと、分かりきっている。
それでも、あの頃のように彼が助けに来てくれるんじゃないかと、そんな都合の良いことを考えてしまう。
「助けて――」
あぁ、やっぱり駄目だ。
呼んでしまう、彼の名を。思い浮かべてしまう、彼の姿を。
彼はもう居ないのだと知りながらも、私は声を大にして叫んでしまう。
「――ルーカス」
その名を口に、必死の抵抗だと言わんばかりに、ありったけの力で魔法を発動する。すると、目の前で光が激しい輝きを放った。
「えっ……そんな………」
私は後悔した。ありもしない幻想を抱いてしまったことを。名前を呼んでしまったことを。
だって、そこには、現れるはずのない彼が立って居たのだから――。
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