第1章

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「アキラだよ。オオイシアキラ。覚えてる?」 その名前は覚えがあった。 小学校のときの同級生だ。 低学年のとき転校してしまったが。 僕は彼女とよく遊んでいた。 快活な女の子で、足が早かった。 僕は足が遅かったので、よくかけっこに負けていた。 「私今友達と遊んで帰る途中でさ。あ、今年千葉にかえってきたの。駅前の洋服屋さんの店長やってるんだ。そうそう高校出てすぐ働いてさ。私。てかこの前彼氏と別れてさ…。まったく、男てほんとろくなのいないよね?あ、ユウトも彼女に振られたの?泣き虫なのは変わらないね。」 一気にまくしたてる彼女の話を僕はひたすら聞いてた。 「アキラちゃんも相変わらずだね…。別に振られて泣いたわけじゃないよ…。」 僕は久々に少し明るい声で話した。 「色々あってね。これから仕事なんだ。あ、アキラちゃんメイク少しおちてるよ。泣いたの?」 彼女は少しギクリとして、バックから小さい鏡をだした。 「うっそ。まじ?てか泣いてないし…。」 彼女はいそいそと化粧を直した。 「てか、やっぱ一言多いよね。ユウト。このこの。」 彼女は僕のとなりに座り脇をくすぐってくる。 ちなみに僕はくすぐりに滅法弱い 「あ…やめて…くすぐったい…。ぁ…。」 僕は笑いを堪えながらいった。 「よかった…。笑った顔、昔のまんまじゃん。その顔でいればさ、もてそうなのに。てか随分筋肉ついたね…。昔あんなプニプニしてたのに…。」 いつのまにか、電車がホームについていた。 「あ、僕あれに乗らなきゃ。」 僕は慌てて待合室を出ようとした。 「じゃ私も乗る…。」 彼女は僕に手を引かれ、電車にのった。 電車のドアがしまった。 いつのまにか彼女の冷たい手を握っていた。 「アキラちゃん手冷たいよ…。」 僕は両手で彼女の手を包んだ。 「…。」 彼女は少しうつむいて、手を見ていた。 「ほんと、変わんないね…。」 彼女は少し目を潤ませた。
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