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「アキラだよ。オオイシアキラ。覚えてる?」
その名前は覚えがあった。
小学校のときの同級生だ。
低学年のとき転校してしまったが。
僕は彼女とよく遊んでいた。
快活な女の子で、足が早かった。
僕は足が遅かったので、よくかけっこに負けていた。
「私今友達と遊んで帰る途中でさ。あ、今年千葉にかえってきたの。駅前の洋服屋さんの店長やってるんだ。そうそう高校出てすぐ働いてさ。私。てかこの前彼氏と別れてさ…。まったく、男てほんとろくなのいないよね?あ、ユウトも彼女に振られたの?泣き虫なのは変わらないね。」
一気にまくしたてる彼女の話を僕はひたすら聞いてた。
「アキラちゃんも相変わらずだね…。別に振られて泣いたわけじゃないよ…。」
僕は久々に少し明るい声で話した。
「色々あってね。これから仕事なんだ。あ、アキラちゃんメイク少しおちてるよ。泣いたの?」
彼女は少しギクリとして、バックから小さい鏡をだした。
「うっそ。まじ?てか泣いてないし…。」
彼女はいそいそと化粧を直した。
「てか、やっぱ一言多いよね。ユウト。このこの。」
彼女は僕のとなりに座り脇をくすぐってくる。
ちなみに僕はくすぐりに滅法弱い
「あ…やめて…くすぐったい…。ぁ…。」
僕は笑いを堪えながらいった。
「よかった…。笑った顔、昔のまんまじゃん。その顔でいればさ、もてそうなのに。てか随分筋肉ついたね…。昔あんなプニプニしてたのに…。」
いつのまにか、電車がホームについていた。
「あ、僕あれに乗らなきゃ。」
僕は慌てて待合室を出ようとした。
「じゃ私も乗る…。」
彼女は僕に手を引かれ、電車にのった。
電車のドアがしまった。
いつのまにか彼女の冷たい手を握っていた。
「アキラちゃん手冷たいよ…。」
僕は両手で彼女の手を包んだ。
「…。」
彼女は少しうつむいて、手を見ていた。
「ほんと、変わんないね…。」
彼女は少し目を潤ませた。
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