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「いっ…一之瀬先生」
「顔色が悪い…体調でも悪いんじゃ?」
「へ…平気でおじゃる。一之瀬先生こそ何処へ参られるでおじゃるか?」
「これから部活だ。そうだ、玉袋先生も我が球操拳法始めないか?」
指を麿の目の前でタコかイカの足のように巧みに動かし、
「あらゆる球をコロコロコネコネと自由自在に操り相手を翻弄する。リハビリにも効果があると報告をもらった」
『どうだっ!』とばかりに胸を張る一之瀬先生は…
悔しいかな、麿よりずっと年上のはずなのに良い体をしているでおじゃる。
真っ白な綿素材のマンキニウエアに身を包み、鍛え上げられた筋肉を惜し気もなく披露している。
風前の灯のようなヘアに反し、僅かな布地の中のジャングルはアマゾン熱帯雨林のように広く湿っているらしく、いつも薄い生地越しに収まりきらずに烏の濡れ羽のごとく色濃く見える。
野生的だし、アソコスキー先生の好みにも麿より近い位置にいるでおじゃる。
「お誘いかたじけない…あまり自信がないでおじゃるが、また見学させてもらうでおじゃる」
「おいおい、そんな弱腰でどうする。まだまだ若いんだ。構わないからどんどん強気に先走れ。先走りは男の特権だからな。先走ってこそ男だぞ」
豪快に腕を振り降ろして麿を壁に叩きつけ、一之瀬先生は笑いながら部活へと行った。
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