.:*:。恋は盲目・゚:*:・'°☆

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「いっ…痛いでおじゃるなあ…」 一之瀬先生なりに元気のない麿に喝を入れてくれたようでおじゃる。 …が、こんな一之瀬先生の優しさに対してですら、“負けた”感に苛まれ、悲しくて壁にくっついたまま心が押し潰されそうでおじゃる。 麿はこんなにも、女々しく弱い漢だったでおじゃるか? 「玉袋先生、大丈夫ですか?」 そんな精神的にめり込んだ麿を壁から引き剥がし助けてくれたのは、三年の寮長・扇喜茶太郎(おおぎ ちゃたろう)だった。 「えらくまた、壁に張り付いてましたけど…もしかして見えない敵と戦ってました?」 「そんな戦いに陥っていないでおじゃる」 “パタパタ”とダダスーツをはたきながら、『すまなかったでおじゃる』と礼を言う。 「玉袋先生、今年も彫刻選手権出たりします?俺、先生の作品楽しみなんですよね~」 「出る予定でおじゃるが…困ったことにセコンドがまだ見つかっていないでおじゃる」 「ありゃま!まだなの?ふ~ん…セコンドねぇ………じゃあ、もし誰もいないなら俺はどうです?」 扇喜の予想外の申し出に、驚きと感動で鼻提灯ができて破裂したでおじゃる。 「三年だから思い出に今年出場迷ってたんですけど、あのハードな戦い考えたら俺には絶っっ対に無理ですから」 いつもは飄々として、全生徒の中でも一番つかみ所がない、不思議な生徒の扇喜なのに、何故麿に?
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