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第三章二話
「貴方は……?」
「あれー? 御堂君、つい先日に会った先輩の顔、もう忘れちゃったの?」
からからと嗤う彼女に零は不信感をつのらせる。
姫希をさがらせ、零は一歩前に出た。
「憶えていますよ。斜交先輩を訪ね時に彼のことを教えてくれた人、……ですよね?」
「あぁん、ちゃんと憶えてるじゃない。いいこいいこしてあげようか?」
頭を撫でる仕種をする彼女。
「でも酷くない? 彼の事、丁寧に教えてあげた私に〝忘却〟の魔法をかけるなんて。
私、キミの事、ちゃんと憶えていたいのに。そんな態度じゃ、私に嫌われちゃうぞっ」
彼女の発言に、零は今度こそ警戒した。
双眸は鋭くなり、彼女を射貫く。
「……何者ですか、貴方は」
彼女はクスッと笑うと、優雅なお辞儀をする。
「初めまして、御堂零。私は『暁の風』所属の海藤(かいどう)アリスと言います。以後、お見知りおきを」
口調が一転、真面目な自己紹介をする海藤アリス。
「海藤アリス……。経歴には魔法使いの素養は無いって書いてあったと思うが……」
「そんなの簡単だよ。偽造だよ偽造。そんな簡単な可能性も見落としてるの、君は? だから私たちに出し抜かれるんだってば」
私たち、という単語に姫希がビクッと身体を竦ませる。
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