20人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「おかえり」
「ああ、なんだ。もう寝ていたものとばかり思っていた」
腕を回す肩口から私の方へと振り向いたジャクシルは、甘く微笑むと、サイドテーブルから取り上げたグラスを一口含んだ。
「忙しいのね」
「初めだけだ。直に従僕らも私の意向を理解するようになるだろう。それからはそれぞれの外交担当員に一任出来るようになる」
そう言うとジャクシルは一気にワインを煽り、グラスをテーブルに落ち着けた。
わたしは回していた手を引っ込めようとした。
しかしすぐに彼は私の右手首を捕まえると、ぐいっと強引に引き寄せて、
「ひゃあっ!」
捻るように半回転したわたしの身体は、彼の逞しい胸の中に飛び込んでいた。
「捕まえたぞ、チル」
嬉しそうに頬を染めて甘く微笑むジャクシルの手が、わたしの膝の下に腕を差し込まれ、次の瞬間、わたしは彼に抱き上げられていた。
「お姫様」
頬で弾ける甘い口づけにとろけそうになって、ふるふると頭を振る。
「待っていてくれたのだな」
透けたネグリジェの下は、何も着けていない。遊女時代はそうして待っていたけれど、それでも最近はきちんと寝巻きを羽織っていた。
では、なぜ今日はこんなあられもない格好をしていたのかというと……
「甘い香りがする……誘い込まれそうだ…」
フリルがふんだんにあしらわれたシースルー素材のネグリジェの裾を荒々しく捲った彼は、わたしの脚のあいだをねっとりと眺め、口角を上げた。
最初のコメントを投稿しよう!