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自嘲めいた玲の言葉に、俺はそうだなと返した。
「そうだ。もう終わったことだ。それをもっと早く...俺が諦める前に気付いてくれていれば、俺達の道は交わったんだろう。」
「もう...俺のことは好きじゃない、か?」
それを言われると、そうだとは言えない自分に嫌気がさす。どんなに傷ついても、やはり俺はこいつが好きなんだ。だけど...
「お前の言葉を信じられるほど、俺はそこまで強くないんだよ。俺のお前への想いは、あの日割れてしまった。完全に修復なんてできない」
「俺が、それを直す。もとに戻らないかもしれないけど、違う形になるかもしれないけど、それでも...」
本気...なんだろうな。真剣な瞳に嘘は混じっているようには見えない。信じたい。まだこんなにも好きなんだ。一緒にいたい。
「でも俺はすぐにアメリカへ戻るぞ。そしてそのまま、あっちで生きるつもりだ。余程のことがない限り戻ることもない。結局、俺達は一緒にいることはできないんだ」
「...俺の進学先、聞いてないのか?」
知らないと首を振る。玲の進学先の話なんて、というか玲の話自体を避けていたし。
「お前はきっと俺のいるところには帰ってこないだろうって考えたら、そのままアメリカに留まるだろうと予想した。それで担任に聞いたんだお前の留学先。それで決めた」
「決めた?決めたってなにを...」
そこでハッとなった。まさか、こいつの言いたいことって!
「気付いたか。そうだ。お前と同じ大学に行くことにしたんだ。これでも次席だからな」
抜きん出たお前には敵わないけどなと笑っていたけどそういう話ではない。
「なっ!もし俺が戻ってきたらどうするつもりだったんだよ」
「それも考えたけど、ずっと近くにいたんだ。お前の考えそうなことくらい分かる。それだけはないだろうって」
確かに、玲の言った通りだから少々ムッとする。
「愁、お前さえ良ければ一緒に暮らしたい。お前が抱えていた寂しさを、少しずつ無くしていきたい」
駄目だろうか、と眉尻を下げて寂しそうに笑う玲に拒否できるはずがない。だってそれは俺がずっと望んでたことだから。玲と一緒にいることが、俺の願いだから。
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