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「お二人共。寮の門限までに帰ってこれませんよ?
門限は19時、何か特別な理由がない限りは罰せられます。」
そう、瀬戸さんに言われて左手首の時計を確認すると
「17時か…。瀬戸さん、珈琲専門店まで案内を頼んでもいいですか?」
「えぇ、勿論ですとも。さぁ、薫様も私の手を齧るのは止めてください。
入り口に車を着けてありますので、足を動かして下さい。」
何故か無言で瀬戸さんの手を齧る薫を横目で確認し入り口に急ぐ。
………カチャッ……バタン。
……………ブゥオン。
瀬戸さんの運転はスマートで酔わない。
動いていても方眼用紙に綺麗な正方形が書ける自信がある。
「そんな執事の手を齧るのはどうかと思う。」
「ゆきちゃん?意味が半分以上伝わらないよ?
まぁ、考えてることは分かるから答えるけど。」
「……で?」
「ゆきちゃんの手を握っていたからだよ。
ねぇ?左手貸して?」
「なんでだ?……まぁ、いいけど。」
………ギュッ。ニギニギ。
ーーーーーーーーカプッ。
「ちょっ!?おまっ!痛ぇよ!!」
「へへーっ。僕の印付けちゃった♪
ゆきちゃんのこの指は、僕が先約済みだからね!」
あらまぁ、なんてことでしょう。
左手薬指にはしっかり歯型が円を描くように
ついているじゃありませんか…
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