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【序】
雨の上がったばかりの屋外で、湿った土や青々しい緑の香りが鼻腔をくすぐる。
灯りの乏しいグラウンドを、大きな炎が煌々と照らす。
満点の星空が、それに負けじと光り輝く。
炎を囲む人々に、そのノスタルジックな風景を楽しむ余裕はない。
皆、そのオレンジと黒の混じり合う炎から、目が離せずにいる。
灯油と、ナニカを焼く無粋な激臭が、土と緑の香りを吹き飛ばす。
その炎は、大きなヒトガタを成していた。
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