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街ではジングルベルが流れ、プレゼントやケーキを抱える男親の姿も見かける。幸せそうに手をつなぎ、微笑むカップルや、サンタの格好をしている慈英を見て、目を丸くして、次の瞬間母親に優しく声を掛けられて、
「サンタさ~ん」 可愛い声を上げて、手を振る小さな子供を見て、誰からも見えてない姑獲鳥はそっと慈英の袖を握る。
はっと彼が振り向くと、彼女は涙を浮かべた潤んだ瞳でじっと慈英を見つめる。
「どうしたの?」
「……私、この子を産んであげたかったんです」
先ほどまでの、茫洋とした視線が意思を持ち始める。華やかなクリスマスイブの夜の街の中で、くすんだように見えていた姑獲鳥は徐々に存在感を増す。
「あの……この物の怪の気配の一番強い場所がみつかったみたいなんですが」
姑獲鳥の様子に気を取られていた暁月は、次の瞬間肩に飛び乗るように現れた式神の言葉に頷いた。
「……どこや、そこまで案内してくれへん?」
きっと、そこに行ったら何かが見えてくる、暁月はそんな予感がした。
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