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暁月は年末に向かうある日、いつもどおり読んでいた新聞で、あの女を殺した男が警察に自首してきたことを知った。
「せやから、ベテランの姑獲鳥はんは怖いと言うたやろ?」
ポツリと呟いて、まあ、自首したからといって、姑獲鳥がそれで納得したかどうかはわからないが。
(まあ、姑獲鳥としては格好の標的を見つけたことだし、しばらくはがっつりと取りついて、 夜毎枕元で恨み言を言っているかもしれへんな……当然の報いやけど)
と暁月は酷薄な笑いを浮かべる。
まあ、よくも悪くも、慈英が鳥を拾ってきたお陰で、深い怨念を持った物の怪が増えずにすんだ、ということは、少なくとも評価できるのかもしれない。
そう思って小さく笑みを浮かべたその途端。
「暁月ぅぅぅぅぅぅぅ」
玄関先からまた情けない声が聞こえる。
思わず暁月はぎゅうっと瞳を細め、玄関先に声を飛ばす。
「……今度は何やっ!!」
どうせまた、慈英が何か厄介事を持ち込んできたんやろう。
怒り半分……諦め半分で暁月は立ち上がる。
まあ、千年してきたことの繰り返しを、また新たに一つ繰り返すだけだ。
でも、この弟が居なければ、この千年は相当退屈で耐えられなかったかもしれない。
暁月はそんな想いをそっと表情に隠して、唇に浮いた笑みを誤魔化すように、わざと、どすどすと足音を立てて、玄関先に向かったのだった。
~ 終 ~
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