【2】

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「毎度毎度でほんま申し訳ないんやけど、物の怪退治に付き合うてもらわれへんやろか……」  少し屈みこんで式神たちに頼むと、皆表情を一様にして、うんうんと頷いて、次の瞬間、慈英の後をついてくる物の怪たちにしがみつくと、ポンと破裂するような音を立てて、一体一体、成仏させていく。 「……なんであんさんはあれほど、口が酸っぱくなるほど言うてるのに、結界を張らんで外をフラフラと歩くんや!!!」  それを片目で見守りながら、暁月が慈英に向かって怒りのまま叫ぶと、その勢いに焦ったのか、それとも状況が悪いのに気づいたのか、少しマシな魔力を持ったらしき物の怪が、暁月の方に向かって、戦いを挑むべく、その体を飛ばしてくる。 「……えっと……あの暁月、怒ってはる……やんな」  首をかしげて、ふさふさのしっぽを揺らすその男をちらっと一瞥し、暁月は飛んでくる物の怪に印を切りながら、笏で叩き斬る。 「怒ってるにきまってるやろがっ」  思わず叫び声混じりに叱責しながら、ぎぃっと慈英を睨みつけると、ヒィィィっという顔をして、肩を竦めて頭を抱え、しゃがみ込む。 「いや、一応ね、結界は張って出かけたん……やで」  頭を抱えつつ、必死に言い訳する姿を見て、そのまま物の怪を切る勢いで、この妖狐も叩き斬ってしまいたい。  ……まあ、そんなことで簡単に叩き斬れる化け狐ならば、いっそ話は早いのだが……と暁月は今日もまた思う。  気づくと、式神達の自らを犠牲にした戦いのお陰で、妖怪たちも大分数を減らしている。式神で処理しきれずこちらに歯向かってくる奴らは、印と呪文で何とかなりそうな手合だ。  それでも数が多かったため、五分以上かけてようやくひと通り片付けた。 「あんさん、途中からでも物の怪達を拒否しはったらよかったやろ?」  就寝前の思わぬ物の怪封じに追われて、疲れに唇を噛み締めて、暁月は文句を言う。  千年の齢を持つ妖狐、などという奇想天外な存在は、まさしくブラックホールのようなモノで、ふらふら歩くだけで、妖怪変化、物の怪、亡霊幽霊、おおよそこの世の魑魅魍魎ならすべて、磁力の様に惹きつけてやまない。  慈英だってそういったことがわかっているから、普段なら、自らの妖力に結界を張って外に漏れ出さないように封じ込めて境内の外に出て行っているはずなのだ。
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