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 厄介事に巻き込まれて、ひどく不機嫌な様子の暁月に気づいているのか、慈英はアワアワと慌てながらも、笑みを浮かべて、その場を誤魔化そうとする。  その時ようやく、暁月は慈英が必死に隠そうとしていた影に気づいた。 「……慈英、それ、どこで拾ってきはったん?」  またどこぞの捨て化け猫でも拾ってきたのかと、慈英の後ろを覗きこむと……。 「あの……スミマセン……」  ペコリと頭を下げるのは、ぱっと見は小柄な可愛らしい少女めいた……それでも成人しているらしき女性に見える。  ただし、片手が手の代わりに翼になっていて、腹部はありえないほど膨らんでいる。人の手をした指先でそっとその腹を大事そうに抱えて、不安そうな顔をして、そのくせ妙に健気そうな瞳で、こちらを上目遣いに見つめた。 「……猫かと思ったら今回は鳥かいな……」  暁月は思わずがっくりと肩を落とす。  それは、ウブメ……産女とも表記するが、とにかく姑獲鳥うぶめだ。  その体内に生み出すことの出来ない子供を抱えた切ない妊婦の物の怪だ。  頼りなげで儚い様子を見て、暁月はいつものように、深いため息をついた。  元々情の深い慈英が、この儚げな姿に、つい結界を解いて連れてきてしまったのもわからないでもない。  とはいえ、境内の中に、こんな穢れを連れてきてもらっては困るのだが。 「……暁月、姑獲鳥、飼ってもええ?」  ……こんな時だけ、捨て猫のような切なげな瞳で私をみるな、と暁月は言葉には出さないまま、心の中で毒づく。  そもそもあんたは狐やろ、と訳の分からない不平を小声で漏らしながら。 「飼えるわけあらへん!! 姑獲鳥は、捨て猫やあらへんのやで!!!」  と叫ぶ。確かに姑獲鳥は、優しい母親と幼気な少女の顔を併せ持っている。苦しげで切ない顔をじっとこちらに向けられると、うっかりすると、その瞳にほだされてしまいそうだ。  ……いや妙に初なところのある慈英なら、一発で堕ちるだろう、と暁月は納得した。
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