不思議な魅力をもつ人

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私の高校では、秋の体育祭の代わりに球技大会がある。 球技大会当日、あかりの姿が突然消えたので、教頭先生に頼まれて今はあかりを探している最中だ。 『塩谷先生、実は一之宮先生は心臓が弱いんだよ。体も弱いから心配でね。彼女、よくフラッと消えるだろう?いつもどこかで日向ぼっこをしているから探して来てくれないかな…』 ……彼女、心臓が悪かったんだ…知らなかった。 しかし日向ぼっこって… 確かに彼女はよく消えるけど日向ぼっこをしに行ってたんだ。 子供のようで可愛らしいな…… 「あ…いた。」 学校の中庭にある木製のベンチにぼっーとしながら空を見上げて座っているあかりの姿を見つけて、あかりの横に座る。 「ここにいたんですか、一之宮先生、教頭先生が心配してましたよ。」 あかりは私の方を見るとニコッと笑う。 「私の体が弱いから?」 「…みんなに言わないんですか?」 「だって誰も聞きませんもん。一応、校長先生と教頭先生には採用試験のときに言っておいたのでそれで十分でしょう。」 そう言うと、あかりはまた空を見上げる。 「塩谷先生、あの雲、サンマに似てません?…美味しそう……まさに秋って感じですよね。」 私は笑いながら答える。 「普通、女の人なら紅葉とかを見て秋を感じるとか言いませんか?」 「私って女に見えますか?…実は男なんですけど……」 「えっ!?」 私の反応を見て、あかりはいたずらをした子供のように笑う。 「冗談です。」
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