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私が落ち込んでいると、コピー機を直した塩谷先生が私の前の席に帰ってきた。
塩谷先生と目が合うと、塩谷先生は私に優しく微笑む。
「…………」
やっぱり痛い……
変な病気かしら?
これは温泉にでも入って治した方がいい…?
というか、温泉で治るものかしら…?
「一之宮先生!!」
私が中村先生と話している塩谷先生の姿をぼうっと見ていると、私の真後ろの席にいる村上先生に声をかけられる。
「…はい?」
村上先生は席を立って私の側まで来ると、映画のチケットを私に渡してくる。
「あの……今度の休み、一緒に映画を見に行きませんか?」
……映画……
それはちょっと……
「…ごめんなさい、行けません。私、婚約者がいるので他の男の人とむやみに外出するなと、親からきつく言われているんです。」
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「あの……今度の休み、一緒に映画を見に行きませんか?」
村上先生があかりに言ったその言葉に、小テストの採点をしようとテスト用紙に伸ばしていた手が止まる。
あかりの顔を見ると、あかりは少し困惑していた。
しかし、私をもっと驚かせたのはあかりの言った次の言葉だった。
「…ごめんなさい、行けません。私、婚約者がいるので他の男の人とむやみに外出するなと、親からきつく言われているんです。」
こ、婚約者……
「一之宮先生はその人のこと好きなんですか?」
村上先生があかりに聞く。
「……嫌いではないです。私、嫌いな人いませんから。」
「…そうですか…」
村上先生は悲しそうな顔をすると、あかりに「お幸せに」と一言言い自分の席に戻っていった。
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