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―数日後―
「塩谷先生、お先!」
中村が学校の仕事を終えて、他の先生方と帰っていく。
みんなが次々と帰っていく中、私とあかり2人が職員室に残っていた。
私は帰り支度をして自分の席を立つ。
「私も帰りますね。一之宮先生は帰らないんですか?」
「…………」
あかりは何も答えない。
「一之宮先生?」
するとあかりは顔を上げる。
「えっ?…ああ、すみません。私、集中しすぎると周りが見えなくなるんです。」
……あかりのこういう性格、結婚する相手の人は理解してくれているんだろうか……
心配になる
「明日の授業の予習、もう少しで終わるので私のことは気にせず塩谷先生は先に帰ってください。」
あかりはいつもと変わらず笑顔だ。
「…じゃあ、お先に失礼します。帰りは十分気をつけてくださいね?」
「はい」
私はあかりにそう言い残し、職員室を後にした。
校門を歩いていると、ある一台の高級車が止まっていた。
不審に思い横目で見てみると、運転席には品のある男性が座っていた。
私が学校から出てきたのに気づくと、車内にいたその男性が車からおりてくる。
「初めまして、私、雨宮東吾と言います。あの、あなたはあかりさんと同じ学校の先生ですか?」
「…はい」
「彼女はまだ学校ですか?」
「はい。まだ中で仕事をしています。」
「…教師なんて仕事、早くやめてしまえと言ったのに……」
チッと舌打ちをして、面倒くさそうにしているその男を見て、私は少し苛立ちを覚えた。
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