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「あなたは一之宮先生とはどういったご関係ですか?」
私はその男性に尋ねる。
「あかりさんの婚約者ですよ。」
にっこりと営業スマイルをするその雨宮という男性。
…この人があかりの婚約者…?
イメージしていた人物とはだいぶ違う。
「…あのっ、突然ですが失礼を承知でうかがいます。一之宮先生は子供が産めないほど、そんなに体の具合が悪いんですか?」
私は雨宮さんにあかりの容態を聞いた。
「へぇ…あかりさんはあなたにそんなことまで相談してるんですか?仲がいいんですね。まあ、別に構わないけど。」
「あかりさんの体はかなり悪いです。特に心臓。医者からは子供が出来ても、出産に母体が耐えられないと言われたそうですよ。」
「…………」
あかりの病気を顔色ひとつ変えずにそう答えるこの男が私には憎らしく思えた。
「でも、私は子供なんて別に望んでいません。あかりさんと結婚するのは、一之宮家の一人娘という肩書きとあの美貌が目的ですから。」
「子供なんて他の女に産ませればいい。」
「……っ…」
さらっと、とんでもないことを言った雨宮さんに、私は殴りたい衝動にかられた。
「知ってますか?あかりさんのお祖父様は政財界で一目置かれるかなりの重鎮なんですよ。」
「私はいずれ、政界にうって出ようと思ってましてね。そのためには一之宮家の後ろ楯は金を積んででも喉から手が出るほど欲しい。」
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