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―春休み―
「よう!塩谷!!元気か?」
「ああ…中村、相変わらずだな。」
中村優人とは大学時代からの友人で、同じ国語の教師だ。
今日は久しぶりに、中村から呼び出されて夕食を一緒に食べることになった。
「今日もいつものように居酒屋でいいか?」
「ああ、私も居酒屋は好きだからそうしよう。」
私が中村に笑いかけると中村も笑う。
「お前、その自分のことを【私】っていうのすっかり板についたな。本当に先生っぽいぞ。大学の頃は【俺】って言ってたのに。」
「何だか【私】の方が言いやすいんだ。こう言ってると、本当の自分のような気がする。」
「ふうん。まあ似合ってるからいいんじゃねえ?」
★★★★★
2人でいつもの居酒屋で食事をしながら話をする。
「なあ、実はな…俺、本年度からお前の高校に異動になった。」
「え?」
私は少し驚いたが、公立の高校では普通のことだからすぐに納得した。
「そうか、じゃあ春休みが明けたらよろしく。」
私はそう言って微笑む。
「まあ、それよりも言いたいことがあって今日はお前のことを呼び出したんだ。」
「へえ、どんな話だい?」
中村は少し興奮した状態で、私に話はじめる。
「俺と一緒にお前の高校に赴任する倫理の先生がな!すごい美人だって周りの奴らが騒いでるんだよ!!」
なるほど…この手の話か……。いかにも中村が好きそうな話題だな…。
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