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けっこう時間がかかっちゃった……
私が帰宅しようと教職員用の昇降口に行くと、塩谷先生が靴箱の前に立っていた。
「…塩谷先生、帰ってなかったんですか?」
「…………」
塩谷先生は黙って何も答えない。
ただ、靴箱にもたれかかって物思いにふけっていた。
「塩谷先生、どうかしました?私のこと見えてますか?」
塩谷先生の顔の前で、手のひらをヒラヒラと振ってみる。
「……嫌でも見えてますよ……」
塩谷先生が私の顔をじっと見る。
「…………」
…塩谷先生、何だか様子がおかしい……
「一之宮先生、駅まで送ります。一緒に帰りましょう。」
「…はい」
わけが分からないまま2人駅に向かって歩き出す。
★★★★★
駅に向かいながら隣を歩いているあかりの顔を見る。
「……一之宮先生、近くの公園、ちょうど桜の花が見ごろなんです。少しだけ寄り道していきませんか?」
あかりは私の方を見ると、嬉しそうな顔をする。
「お花見ですか?」
「はい…」
あかりを桜の花がたくさん咲いている公園へ連れていくと、あかりは楽しそうにはしゃぐ。
「塩谷先生!桜の花って塩漬けにして食べられるんですよね?なんてお得な花なんでしょう!」
「…………」
相も変わらず、可愛らしい……
無邪気に桜の花びらを拾っているあかりは、その花びらを見ながら小さな声で呟く。
「桜の花って私に似てますね……。雨が降ったら一気に散っちゃいそうなところ…私にそっくり……」
急に悲しい顔であかりは笑う。
「…………」
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