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「一之宮先生、桜の花は散っても何度でも次の年には花を咲かせますよ。」
「……でも、その桜の木がもう寿命だったら…?」
私が励まそうと思って言った言葉に、あかりは顔を曇らせてそう返してきた。
「…私、あと何年生きていられるのかしら……」
「…………」
何も言えないでいる私にあかりは、すぐ側にある公園のベンチに座るよう促す。
私はそれに従い、ベンチに座る。
「塩谷先生…私ね、小さい頃にお医者様から20歳まで持たないって言われたんです。」
「……でも、今、生きてますよね…これからだってきっと大丈夫ですよ……」
あかりはくすっと笑う。
「小学生の頃は、私は高校生になるまで持つんだろうか…。高校生の頃は、私は20歳まで持つんだろうか…。そうやってずっと生きて来ました。そして今、23歳です。」
「昔から病気でお金がかかる私の面倒を見てくれた家族に、せめてもの恩返しがしたいんです。私が生きているうちに……」
……あかりはきっと知っている
雨宮という人物がどんな人なのか……
自分が利用されていると知っていて婚約を決めたんだ
でも、子供の頃からずっと【死】を意識して生きてきたあかりはそれで幸せなのか…?
好き好んで体が弱く生まれたわけではないだろうに……
不公平だ…
この世の中はどうしていい人が傷つくようにできているんだろう……
あかりを幸せにしてあげたい
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