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しばらく2人で桜の花を見上げていると、あかりが立ち上がる。
「そろそろ帰りましょうか、塩谷先生。」
「…………」
私はベンチから腰をあげるとあかりの手を掴み、あかりを抱きしめた。
「えっ?…塩谷先生…?」
「一之宮先生、私はあなたのことが好きです。婚約者がいることが分かっていても、これだけは伝えておきたい……」
「私はあなたを心から愛しています。」
「…………」
あかりは何も答えない。
「一之宮先生…?聞こえてますか?」
あかりの顔を覗き込むと、あかりは顔を真っ赤にしていた。
「…塩谷先生…今の言葉、もう一度言ってもらえますか……?」
私はあかりの両頬をを覆うと、あかりの瞳を見つめる。
「…あかり、好きだよ。君のことを愛してる……」
私がそう言うと、あかりは私の背中に両手を回してきた。
「塩谷先生…春なのに今日はまだ寒いので、しばらくこのままでいてくれませんか……」
私は少し震えて、目にうっすらと涙を溜めて私に抱きついているあかりを更に強く抱きしめた。
「しばらくじゃなく、ずっとこうしていたいです……」
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駅に着いて、2人で電車を待ちながら、手を繋ぎ見つめ合う。
「こんな姿、生徒に見られて教頭先生に報告されたら、きっと私たちのどちらかが異動になってしまうでしょうね…」
「何だか教師というだけで、普通のことをしていても悪いことをしているように思える……」
「…その時は私が学校を辞めますから塩谷先生は大丈夫です。」
「婚約した時点で早く仕事を辞めて、花嫁修業をするようにと親からも相手からも言われているんです。」
私はあかりを握っている手に力を込める。
「やっぱり婚約…するんですか……?」
あかりは悲しそうに頷く。
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