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「えっ?お祖父様が倒れた!?」
家に帰ると、お父様からお祖父様が脳梗塞で倒れたと告げられた。
昼間に倒れて、今は昏睡状態で目を覚まさないらしい。
「お前には学校の仕事があるから知らせるなと、お祖父様が倒れた直後言ったから電話はしなかったけどかなり悪い状態だ…」
「…………」
「あかり、悪いけど雨宮さんとの結婚の話、早急に進めるぞ。向こうもそう望んでるし、お祖父様が亡くなりでもしたら私たちの生活も成り立たなくなる。いいね?」
…私に選択権なんかない……
「…はい」
私はそう返事をするしかなかった。
その日から私の結婚の準備が着々と進んでいった。
私はその事を塩谷先生には言わなかった。
言わないで毎日のように塩谷先生と会い続けた。
私は結婚するその日が来たら、黙って塩谷先生の前から消えるつもりでいた。
―結婚式3日前―
教頭先生に応接室に呼び出される。
「一之宮先生、後任の先生は決まったよ。本当に明日いっぱいで辞めていいのかね…?」
「はい、前から言っていた通り結婚することになったので教師の仕事はもう潔く諦めます。」
「…他の先生たちには挨拶をしないのかい?」
「はい。一身上の都合とでも言っておいてください。」
教頭先生はため息をつく。
「塩谷先生にも?」
「…………」
「お互い好き合っているんだろう?本当に何も言わずに消えていくつもりなのかい?」
私は震える声で答える。
「好きだからです。最後の最後まであの人の優しい顔を見ていたいから…。湿っぽく別れたくないんです。塩谷先生のこと、もうどうしょうもないくらい好きだから……」
私はそう言って堪えていた涙を流した。
「…………」
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