258人が本棚に入れています
本棚に追加
―翌日の放課後―
「塩谷先生、お待たせしました。じゃあ、行きましょうか…?」
あかりと私の家の近くにある駅で待ち合わせをすると、2人で家に向かう。
「……あかりは両親に今日、外泊することきちんと伝えてきたのかい?」
「…今日は女子大時代の友達の家に泊まると言ってきました。……両親に嘘ついちゃいました……」
私の腕に手を絡ませて、少し申し訳なさそうな顔をしてあかりは笑う。
「嘘ついてでも塩谷先生と一緒にいたいんです。私ってかなり悪い娘ですよね……」
私はあかりのほっぺたをつねる。
「…私としては、もっと悪い娘になってほしいな……。雨宮さんとの婚約を解消して私と一緒になってほしい……」
「…………」
私の言葉にあかりは黙る。
「冗談だよ。言ってみただけだ……」
「……塩谷先生、ごめんなさい……」
あかりの瞳にうっすらと涙がにじむ。
「何で謝るんだい?あかりは何も悪くないよ。」
「ううん、私、すごく悪い女なの……塩谷先生、本当にごめんなさい……」
だって今日で塩谷先生と会うのは最後だから……
明日の朝には、塩谷先生の前から姿を消す。
明日、私は雨宮さんと結婚する……
結婚式は午後からだから、明日、家に帰る前にお祖父様のいる病院に寄っていこう……
いつも、お見舞い、土日しか行けてないし……
「あかり、今日の夕飯は何にする?」
「なべ…」
「夏なのに?」
塩谷先生はくすっと笑う。
「ダメ?」
「いや、いいよ。」
私たちは手を繋いで、塩谷先生の家に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!