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そして、あかりと私の間に特に何もないまま季節はあっという間に秋になった。
この頃、私は向かいの席にいるあかりのことが少し気になっていた。
女性としてではなく別の意味で……。
「一之宮先生!これ、体育の授業の終わりに喉渇いちゃって買ったんですけど、間違えちゃって飲めないアイスティーを買っちゃって…俺たちの代わりに貰ってもらえませんか?」
くすっ、わざとだな……高校生の可愛い嘘だ……
「…ありがとう、先生もちょうど喉が渇いてたの。」
あかりは優しく微笑むとその生徒からペットボトルの飲み物を受け取る。
そして、生徒たちが嬉しそうに職員室から出ていくのを確認すると、それを机の上に置く。
……まただ、また飲まない……
あかりはなぜかペットボトルの飲み物を一切口にしなかった。
いいところのお嬢様だから?
いや、コップに注いで飲めばいいだろう……。
彼女は、喉が渇いた時はいつも給湯室で紅茶やお茶を自分で作って飲む。
しかしペットボトルの飲み物は、誰かにあげるわけでも捨てるわけでもなく、きちんと家に持ち帰っている。
私はこのあかりの行動が正直、理解できずに気になっていた。
私が黙ってあかりの事を見ていると、そこに中村がやって来てあかりにペットボトルのお茶を出してきた。
「一之宮先生、これ自販機でコーヒーを買うつもりがお茶を買ってしまって…でも俺、お茶は苦手なので代わりに飲んでくれませんか?」
…中村…お前、やってること高校生と同じだぞ……。
あかりはまた微笑んで、中村に礼を言ってペットボトルのお茶を受け取る。
中村が去ると、また飲まずに机の上に置く。
……気になる……
私は思いきってあかりに聞いてみることにした。
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