第1章 江山藍都 1

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ああ、変な臭いがする。 ツンとくる。鼻で息をしたくない。 視線を落とすと、タイルの隙間を水が流れていくのが見えた。 灰色のコンクリートの溝が、ゆっくりと黒く染まっていく。 そんな光景をいつまでも眺めているわけにもいかず、僕は足を動かした。 個室からでて、洗面台へ向かう。 このトイレには立って用を足せる便器は設置されていないからか、トイレにしては広く感じられた。 まあ、つまり女子トイレというわけだ。 彼女に蹴られた頭がまだ痛い。 ヒリヒリするから、たぶんどこか擦りむけている。 洗面台の鏡を見て、思わず笑いそうになる。 なんつー顔してんだか。 醜いなあ。 死ねばいいのに。
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