第22章 桐島彩 1

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「どうしたの?」 一歩ずつ近づいてくる。 「ぁ、」 来るなと言おうとしても、声が出ない。 喉が、口が、上手く動かない。 ガチガチと歯が震える。 つい数分前の決意が、ドミノのように崩れていくのを感じた。 それほどの、ひどく冷たい目。 今までと明らかに違う。 こいつは、普通じゃない。 あいつと私の距離が縮むたびに、心臓の鼓動が早くなっていく。 額から湧き出た汗が頬を伝い、落ちていく。 「ぁ、あ」 やばい。 やばいやばいやばい。違う。出ていった奴と違う。別人だ。あいつはここまで冷たい目はしていなかった。 じゃあ、こいつは? 誰だ? ついに目の前まで来た。 そして、屈む。 やばい_________
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