第3章 三崎由乃 1

25/25
14862人が本棚に入れています
本棚に追加
/409ページ
廊下の奥でチンっと、響きのある音が聞こえた。 どうやら迎えが来たようだ。 「あーあ、かわいかったなアイトくん」 それでいて。 「甘いなぁホント」 私は見逃さなかった。 彼の服にひっついた、長い黒髪を。 明らかに男のものではない。 女性だ。 気付いていないようだったので、そっと取っておいてあげた。 何故嘘をついたのかはわからない。深い理由があるとは思えない。 ただ。 「油断できないなぁ、あの子は」 誰にでもなく呟きながら、私はエレベーターの方へむかった。
/409ページ

最初のコメントを投稿しよう!