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廊下の奥でチンっと、響きのある音が聞こえた。
どうやら迎えが来たようだ。
「あーあ、かわいかったなアイトくん」
それでいて。
「甘いなぁホント」
私は見逃さなかった。
彼の服にひっついた、長い黒髪を。
明らかに男のものではない。
女性だ。
気付いていないようだったので、そっと取っておいてあげた。
何故嘘をついたのかはわからない。深い理由があるとは思えない。
ただ。
「油断できないなぁ、あの子は」
誰にでもなく呟きながら、私はエレベーターの方へむかった。
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