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「次回のご予定は、いつにされますか?」
駅前タワービルにあるMタワー歯科が、私の職場だった。
「彩星(あやせ)お疲れ」
同僚の麻耶(まや)が、早めに出たランチから戻ってきた。彼女は院長の娘で、私の一生の親友。
「じゃあ、私もランチ行こうかな」
「はい、いってらっしゃい」
「あ、そういえば、神谷さん帰っちゃったよ。次は来週の木曜日だって」
「えっ!もっと早く戻ればよかった……」
彼女が恋をしている相手は、患者さんだ。
慰めるように彼女の肩に手を置いてから、ロッカーで簡単にメイクを直し、ランチ用のバッグを持って外に出た。
ーー少し湿っぽい風が頬を撫でた、夏が訪れる前のあの日が、すべてのはじまり。
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