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企画部に戻る前に、営業1課に寄ることにした。
「えーっと、営業1課……本当広すぎでしょ、この会社」
エレベーター横のインフォメーションを眺めたものの、様々な部に営業1課があって、神谷さんのいる1課が見つけられない。
「どこに行きたいの?」
降ってきた甘く低い声に、ドキッとしてしまう。
「か、神谷さんのところに……」
「優なら、30階のCフロア。企画部の5階下のこのあたりだよ」
部長が長い指で指し示してくれた。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
部長もエレベーターに乗るんだよね?いま待っているのは私と部長だけで、とてつもなく緊張してきてしまう。誰でもいいから、来ないかなな……。
「高梨さん、30階まで階段で行く気?」
1階に到着したエレベーターの奥で腕を組みながら、いつも通り部長がやんわり微笑んだ。
「すみません、乗ります……」
待ち人は、やっぱり来なかった。
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