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「失礼します……」
部長の隣に腰掛けると、柔らかく包まれる感覚に少しだけホッとした。でも、鼓動だけは一向に落ち着いてくれない。
「夏輝、同じのでいいか?高梨さんはまだ飲めそう?」
「いいよ。スティンガーね」
「私はモヒートお願いします」
神谷さんが、3人分のカクテルを取りに行った。
部長が目を瞑りながら、琥珀色の残りを傾ける。
グラスをテーブルにそっと戻すと、水滴を細い指先で掬った。
「彩星」
「は、はい」
つい条件反射で返事してしまったけれど、不意に呼び捨てをされて驚いた。
部長の瞳がまっすぐ突き刺すように私をとらえる。
その視線から離れられないのはどうしてだろう。
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