3

21/36

138人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
外は夜風が気持ちよくて、酔いを覚ますのにぴったりだ。 建物に沿ったデッキを、部長の後について歩く。ヒールの音が響く中、ドキドキとうるさい鼓動の音は私にだけ聞こえている。 「こっちに来てごらん」 手招きしている部長に呼ばれていくと、そこには写真と同じ景色があった。 「わぁ、本当だ……きれーい!」 夜の十字架は、海の橋を映し出していた。なんだか全部が非日常で素敵な夜を何十倍にも盛り上げてくれる。 「店出すのに、いいアイディアが浮かばないって誠が言ってきたんだ。同じような店なんて腐るほどあるから、こだわりたいって熱くなっててさ。このアイディアは俺と夏輝からの開店祝いでもあるんだよ」 神谷さんが話し出す。 「……」 「高梨さん?」 「すみません、綺麗なもの見ると止まっちゃう癖があるんです」 「綺麗なものを見ると、止まるクセか……」 部長がふっと笑った声がした。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

138人が本棚に入れています
本棚に追加