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外は夜風が気持ちよくて、酔いを覚ますのにぴったりだ。
建物に沿ったデッキを、部長の後について歩く。ヒールの音が響く中、ドキドキとうるさい鼓動の音は私にだけ聞こえている。
「こっちに来てごらん」
手招きしている部長に呼ばれていくと、そこには写真と同じ景色があった。
「わぁ、本当だ……きれーい!」
夜の十字架は、海の橋を映し出していた。なんだか全部が非日常で素敵な夜を何十倍にも盛り上げてくれる。
「店出すのに、いいアイディアが浮かばないって誠が言ってきたんだ。同じような店なんて腐るほどあるから、こだわりたいって熱くなっててさ。このアイディアは俺と夏輝からの開店祝いでもあるんだよ」
神谷さんが話し出す。
「……」
「高梨さん?」
「すみません、綺麗なもの見ると止まっちゃう癖があるんです」
「綺麗なものを見ると、止まるクセか……」
部長がふっと笑った声がした。
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