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十字に切られた窓から洩れる、アンバーの照明がデッキに黒い十字架の影を作っている。 「本当、いいアイディアだよな」 「そうだね。中にいるときは、テラスがあるの分からないし」 神谷さんと誠さんが、十字架を眺めながら交互に話す。 「ところで、まだ開放しないの?」 部長が、煙草に火を点ける。 「テラスのドアを開けるのは、言ってくれた時だけ」 「なんか勿体ないな。他に知ってる人なんて相当限られてるだろ?」 部長と神谷さんの紫煙が海へ流れていく。 「私、特別な気分です」 「特別?」 誠さんが、オリーブを摘まみながら言う。 「なんだかご褒美もらった感じがします。この十字架も、ここに来ないと見れないから」 私は、足元にある十字架の影にグラスを置いてみた。 「そう、この感じ!!」 「ん?なにが?」 誠さんがグラスを持ったまま、神谷さんに問いかける。 「俺が高梨さんを選んだ理由は、その感じなんだよ」
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