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「高梨さんって発想がいいって言うか………あー伝わるかな、この感じ」
「私、発想いいですか?」
思わず、隣に立つ部長に聞いたけど、部長と見つめ合ってしまって心地よい後悔を感じる。
「まだ企画案を見てないから分かんないけど……グラス、なんで置いたの?」
「十字架の影が、深い海に繋がっているみたいに感じるんです。グラスを置いて、手品みたいに消えたら面白いなって思って……でも、やっぱり繋がってなかったみたいですね。当たり前だけど」
部長が私に優しく微笑まれて、一層頬に熱を帯びる。
「そう、その感じ!歯医者で前に言ってくれたの覚えてない?」
「私、何か言いました?」
「歯磨き指導してくれた時、俺は力入れて磨き過ぎてるって言われたでしょ?だけど、ついゴシゴシ磨いちゃうって言ったら……」
「あ、分かりました。それ、言わないで下さいっ!」
虫歯を退治するには追うと逃げちゃうから、優しくそっと歯ブラシで誘ってあげると出てきてくれます……って小児向けのを少し言い換えただけだ。
神谷さんはフレンチコネクションと一緒に、言葉を飲み込んでくれた。
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