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「いやいや、そこまで言っておいて言わないとかナシだろ!」
誠さんが突っ込む。
「じゃあ、高梨さんに言ってもらう?」
部長がいじわるに微笑んで、私を見つめてきた。
「だから、さっき俺が言おうと思ったのに」
神谷さんを止めたことを後悔する。
「……それで、優になんて言ったの?」
部長が、首を傾げて微笑む。その表情は、私を簡単に落ちつかない気持ちにさせる。
「……虫歯を退治するには追うと逃げちゃいますから、歯ブラシで優しくそーっと誘い込んで下さいね……って言ったんです」
「な、何それ。可愛い!」
誠さんが、グラスを落としそうになっている。
「っていうかさ、優もいい歳して歯磨き指導かよ」
部長が無邪気に大笑いしている顔を見たら、一層目が離せなくなる。
見透かすような瞳が、今はキラキラして綺麗で……。
「もう!高梨さんのせいで、俺まで恥ずかしいじゃん!」
神谷さんが、部長のフレンチコネクションを奪って飲み干した。
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