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かすかに潮の香りが夜風に乗って鼻をかすめる。
「部長は、坂本さんたちとお話しなくていいんですか?」
このまま2人でいたら、自分が保てなくなる気がして焦っているのが分かる。
このドキドキは、やっぱりお酒のせいだよね?
何度も自分にそう言い聞かせてきたけれど、違うと気付いてしまったから、自分でも気持ちの扱いに困る。
「二次会で話すよ。ひとまず、坂本も飲みたいだろうし」
「そ、そうですか……」
「そんなに俺といたくないなら、坂本のとこ行くけど」
「いえ、そんなことないですよ!」
「……ねぇ、もしかして彩星、酔ってる?」
「かも、しれません……」
部長が店内のバーカウンターへ水を取りに行くと、点けたばかりの煙草が灰皿の上で少し転がった。
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