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テラスの柵に腕を交差して、深く息をつく。すごく心地よい風が酔いの熱をさらってくれそうだ。 「よしっ!」 十字架に向き直って、グラスを手に取った。 「突然、なんの気合い入れたんだ?」 「酔いが覚めてきたので、飲み直します」 「そうか。じゃあ」 部長はグラスをカチッと当ててきた。 「…………」 部長が声を出さずに唇の動きだけで「乾杯」と言った。 思い出すのは、エレベーターでの出来事。あの時、部長はなんて言ったんだろう。大したことじゃないかもしれないのに、一言も聞き逃したくないって思ってしまうの。 もう少しだけでいいから、部長のことを知りたいって……胸の奥が熱くなって、すぐにきゅんとして苦しくなるんだ。
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