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「部長、今日エレベーターでなんて言ってたんですか?ちゃんと聞こえなかったんです」
モヒートのミントをマドラーで少し潰しながら聞いた。
ドキドキする音のリズムと、マドラーでミントを潰すリズムがシンクロする。
「キスしたくなる、って言ったんだよ」
動いていた手が止まり、グラスのミントが少しずつ底から浮かんできた。
「……ねぇ、その顔しないでよ」
耳元に吐息を感じる。
「俺に惚れた顔してんじゃん」
「し、してませんっ!」
大体、惚れてませんから!どれだけ自信があるのよ!!そりゃ、それだけ見た目が良くて会社も一流だったら選り取り見取りでしょうけど、私はそんな簡単に惚れたりなんか――
鼻先がくっついて、部長の甘い香りが漂う。そして、ヘーゼルの瞳は私の心を見透かそうとしていて……。
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