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「どうしてそんなに、目を潤ませるの?」
そらさなかったら、本当に吸い込まれそうな瞳と対峙する。
「……ねぇ、俺に惚れた?」
「い、いいえ。そんなことはないです」
入社早々、直属の上司に惚れるなんて、私が望まない。
部長の視線に負けて十字架に移したら、2人の姿がくっきりと映っている。
「あの、部長?」
「なに?」
「近過ぎます。困りますから、離れていただけませんか」
部長の胸を強引に押し返し、十字架の前に歩いた。
近くで見る十字架は、私の赤くなった顔色まで鮮明に映す。
「彩星」
「それから、名前で呼ばないで下さい」
ドキドキが止まらなくなるの。
見つめられると、2人きりの時だけ名前で呼ばれると……部長の香りを感じると、鼓動がどんどん先を行くように走り出して苦しくなる。
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