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どちらからともなく、ゆっくりと唇が離れて鼻先がわずかに触れる。
2人の曖昧な距離を上手に保ったまま、部長がさらに私を追い詰めるようにして、私はあっという間にソファーに押し倒された。
煌めくシャンデリアと黒い天井が見えるはずの視界は、部長が独占していて、心臓が大音量で鳴り響く。
「……続きは、また今度にする」
唇を合わせたまま甘く囁くと、部長は白い歯を見せていたずらに笑ってみせた。
起き上がって煙草に火を点ける余裕綽々の部長と、まだ押し倒されたままで余裕の欠片もない私。
この体勢に至るまでの出来事が、身体をソファに縛り付けてくる。
……どうして、キスしたの?
私の気持ちを、どうして見透かそうとするの?
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