第1章

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「 もう手、痛くないか?」 「 …うん、痛くない!」 「 んじゃまた遊びに行くぞ!」 「 はーい!」 立ちあがり、走り出した背中。 その後を追うように、僕も走り出した。 「 ねぇしょーちゃん。」 「 んー?」 「 目隠しごっこのときに書いた字、もっかい書いて?」 「 …一回だけだぞ。」 手のひらに書かれる二つの文字。 やはり一つは『き』。 もう一つの方は感触だけじゃなく、クリアな視界で形を覚える。 見たことはあるけどやっぱり知らない文字。 どうやって発音するのかがわからなかった。 僕はその日家に帰って文字が沢山書いてある本を広げ、その文字を見つける。 「 お母さん、コレなんて読むの?」 「 んー?あぁ、それは『す』だよ。」 「 す…。」 自分でも『す』と『き』を手のひらに書いてみる。 「 す、き…すき、好き?」 好きって言いたかったのかな。 僕もしょーちゃんのこと好きだよ。 大好きだよ。 「 お母さん!『だ』と『い』の書き方教えて!」 ちゃんと覚えよう。 そしてしょーちゃんの手のひらに書くんだ。
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