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「 橋田 要君。」
「 はい。」
最初は教室で名前を呼ばれるのも恥ずかしかったし、それに答えるのもとても嫌だった。
けれどそれも慣れたもので、今はただめんどくさいな、としか思わない。
「 要君!コレ要君に似合うと思って持ってきたの!」
可愛いフリルのついたスカートを揺らしながら近づいてきたのは同級生の女の子。
その子の手元をみると、そこには可愛らしいピン留めが。
「 え…、コレって女の子のものだよね?」
男の僕がつければ完璧におかしいものだ。
「 うん、でも要君なら似合うよ!」
顔の近くにスッと伸びる腕。
「 あ、ちょっ…」
「 動かないで要君!」
ワラワラと他の女子が集まってきて抑えられる腕と頭。
「 や、やだっ」
こんなのつけてしまえば、クラスの男子から批判を食らうのはわかりきっていた。
小学校2年生。
もうその頃にはクラス内での立ち位置、人気度、リーダー、そんなのが決まっていて、僕の世界はこの学校という空間に、限りなく支配されていたような気がする。
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