第1話

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  「それでは、決を採りたいと思います」  直ぐ間近で、誰かが声を張り上げた。  思わず背筋が伸びてしまうような、凛とした声だった。 「同盟国セレイアへの援軍派遣に賛成の方は、挙手を願います」  ビクリと肩を揺らして顔を上げると、目の前にドーナツ型の大きなテーブルが見えた。  そのテーブルには、何人ものオッサン達が腰かけている。  厳ついのから柔和なのまで。  右から左までズラーッと並ぶ、オッサンの顔。  オッサン、オッサン、またオッサンだ。  なんだこれ? 「――賛成多数につき、此度のセレイアとブラースの争いに我がトルキアの参戦が決定いたしました」  サーセン?  ケツを取る?  意味が判らない。  俺はキョロキョロと周囲を見回す。  すると先程から司会みたいに一人喋り続けていた男が、不意にこちらに顔を向けた。  お? こいつはオッサンじゃないな。  何かやたらキラキラした顔立ちの優男だ。  イケメンだ。  お花畑でウフフアハハとかしてそうな感じの、儚い系のイケメンだ。 「救援要請のあったマシュー砦の戦い、陛下はどなたを派遣されますか?」  俺がイケメンの美貌をほへぇ~と口を開けながら眺めていると、そいつが急に話を振って来る。  陛下?  とりで?  なんのこっちゃ。  意味が判らなくてほへぇ~と口を開けたまま、イケメンを見つめ返した。  するとその場にいたオッサン達が、一斉にこちらを見る。 「……?!」  うほゥ!  注目の的。  オッサンの視線の集中砲火。  なにこれ。 「陛下! マシュー砦はセレイアの防衛の要。生半可な戦力では陥落は不可能ですぞ?!」 「ここは陛下御自ら陣頭に立ち、我が国の武威を示して下され!」 「左様! 晴れの舞台は陛下にお譲りいたしますぞ!」  反応出来ずにほへぇ~としたままでいると、オッサン達が口々にそう言って来る。  無駄に声がデカイな。  そして誰だか知らんが呼んでますよ、陛下?
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