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「陛下はそれでよろしいので?」
内心で激しく狼狽していると、またあの儚い系イケメンが話しかけて来た。
何故俺に聞く?
思わず背後を振り返ってしまう。
するとそこには、ドラゴンがキシャァアッて感じに大口を開けて威嚇する、荘厳な刺繍がされた背もたれがあった。
垂直の背もたれだった。
しかも長い。
しかも硬い。
どうりで身体が痛いはずだ。
「陛下……?」
背もたれを見て、イケメンに目を戻す。
「陛下、ご決断を!」
するとオッサン達がぐわっとばかりに身を乗り出して、俺に答えを迫って来た。
俺は再び背後を振り返る。
しかしそこにはやはり、背もたれがあるばかり。
「陛下、どうなさいました?」
――って、やっぱり俺かい?!
いや、そんな気はしてたのよ?
みんな俺に注目してるからね。
「一体どうされたのです?」
イケメンが怪訝に眉を顰めながら、俺の顔を覗き込んで来た。
一体どうされたんでしょうね?
本当に俺がどうされているのか聞きたいくらいですよ。
「――砦攻めには陛下の親軍が向かわれるという事で、よろしいですか?」
いや、よろしくない。
よろしくないが、何がよろしいのかも分からない。
興奮するオッサン達を前に、とりあえず俺は適当に頷いておく。
オッサンの威圧感がパねぇからだ。
何しろ眼前に居並ぶオッサン達は、揃いも揃ってマッスルだ。
ゴリマッチョからガチムチマッチョまで、各種取り揃えておいでになっている。
年齢は四十代から六十代くらいまで。
地震、雷、火事、親父系のオッサンのオンパレードだ。
「では、マシュー砦には陛下の親軍二万が向かいます」
カクカクと壊れた人形のように頷いていると、空気を読んだイケメンがまとめてくれた。
何がどうなってるんだ?
そしてここはどこ?
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