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静まり返るリビングに、遠くから響く救急車のサイレン。
2人とも黙ったまま、ソファに並んで座る。
リモコンを手にした部長がオーディオのスイッチを入れると、流行の洋楽が流れてきた。
「あの、片付けませんか?」
手が繋がれたままの甘い状況に、だんだん恥ずかしさが込み上げてくる。ここにいるだけで鼓動が限界に近いほど速度を増す。
「そんなに帰りたい?」
低い声は、私を引き止めるのに充分な色気を帯びている。
視線を感じて顔を上げると、余裕のある顔をした部長と目が合った。
「帰りたくないって言ってるように見えるんだけど、俺には」
恋をしている私の心の中なんて、簡単に見透かされてしまうんだろう。
真っ直ぐな視線に、顔を背けることも視線を反らすこともできない。
熱を帯びてくる身体に、鼓動が大音量でリズムを打つ。
「っ!」
部長に引き寄せられ、繋がりは解いた大きな手は耳元を包み込み、背中に回された腕が密着を強めた。
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