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サイドの髪をかけられた耳に、軽く触れるだけのキスが落とされて肩が浮く。
間接照明に照らされた表情からは甘美な誘いを感じ、鼻先の距離で見つめ合うと、ヘーゼルの瞳に吸い込まれそうだ。
「……目、閉じて?」
言われるままに目を閉じると、柔らかさと穏やかな温かさが重なり合った。
彼女がいても、ただの部下でもいい。
部長を、もっと知りたい。
もっと切なくなるって分かるのに、どうしようもない気持ちに素直になる。
部長の唇が繰り返し触れ、そのたびに気持ちが昂って、気がつけば受け入れるようになって……。
――ガタンッ!!!
玄関の方から聞こえた大きな音で、顔を見合わせる。
「夏輝いるのー?……忘れ物しちゃったんだけど」
聞こえたのは、間違いなく女の人の声だ。
ため息混じりに玄関に向かう部長の背中を、ソファに残された余韻の中で私は見つめていた。
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