7

15/29
前へ
/29ページ
次へ
サイドの髪をかけられた耳に、軽く触れるだけのキスが落とされて肩が浮く。 間接照明に照らされた表情からは甘美な誘いを感じ、鼻先の距離で見つめ合うと、ヘーゼルの瞳に吸い込まれそうだ。 「……目、閉じて?」 言われるままに目を閉じると、柔らかさと穏やかな温かさが重なり合った。 彼女がいても、ただの部下でもいい。 部長を、もっと知りたい。 もっと切なくなるって分かるのに、どうしようもない気持ちに素直になる。 部長の唇が繰り返し触れ、そのたびに気持ちが昂って、気がつけば受け入れるようになって……。 ――ガタンッ!!! 玄関の方から聞こえた大きな音で、顔を見合わせる。 「夏輝いるのー?……忘れ物しちゃったんだけど」 聞こえたのは、間違いなく女の人の声だ。 ため息混じりに玄関に向かう部長の背中を、ソファに残された余韻の中で私は見つめていた。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

107人が本棚に入れています
本棚に追加