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「部長っ……」
「こういう時は、名前で呼べよ」
片手を封じてきた部長が耳に唇を触れさせ、吐息混じりに話す。
――こんなの、嫌。
本当に欲しいのは、こんな関係じゃない。
力を手に込めて抵抗を試みると、突然胸元を叩かれた部長は少しだけ驚いた表情をして離れた。
「そんなに嫌なら、もうしないよ」
あぁ、こういう雰囲気知ってる。冬也と別れてから、幾度となく味わった。
絶望感、虚しさ、失恋のような孤独。
そして知っている限りでは、こうなった人は2度と私と恋をしなくなる。
優しくしてくれるのも、今だけ。
冬也に言われたあの言葉は、もう聞きたくないの。
―― 嫌いになっていいんだよ ――
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