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〈来月の花火大会、神谷さんからお誘いがきたよ!部長さんも誘って彩星も一緒に見ようよ〉
部長も行くなら、私は行けないよ。返事を打つ前に、心の中で麻耶に答える助手席。
〈帰ったら連絡するね〉
とだけ、メールを返して流れていく景色に視線を彷徨わせる。
「誰にメール?」
部長が左手で頬杖を突きながら、また青に変わった信号を見て、ハンドルを握る。
「麻耶です」
「あ、先週来てた子か。彼女、優のことが好きだよね」
「……なんで部長が知ってるんですか?」
「知ってるんじゃなくて、見てれば分かるだろ」
部長が前を見たまま、思い出し笑いをしている。
「思い出し笑いする人って、何て言うか知ってます?」
「俺がエロいって言いたいの?」
「そうじゃなくて……」
「ふーん……じゃあ、なに?」
赤信号で車が停められ、眼鏡を掛けている部長が上目遣いで見つめてくる。
「何を思い出して、そんなに赤くなってんの?」
私の髪をと撫で回して、部長は車を走らせた。
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